男女共同参画を考える

平成14年8月新潟組・巻組合同研修会において

 

 これからの日本社会のあり方を考えるとき、必ず念頭に置かなければならないのが『少子高齢化』の問題でしょう。そしてその原因も対策も、女性問題抜きには語れないことも間違いありません。

 ただ私は、私たち人類にとって「『少子高齢化』社会となることが悪である!」と一概に断ずべきではないと思っています。今の私の思いは、「今進行しつつある 『日本の少子高齢化』には大いに問題があるが、『少子高齢化』そのものはそう悪くも無い」と言ったところでしょうか。

 少子化問題に対して、「子供を生むかどうかは夫婦の問題で、周囲が口を挟むべきことではない。」といった意見があります。確かに多くの選択肢があり、夫婦が互いに話し合い検討したうえで選んだ結果であればこの意見はもっともです。しかし現在の日本社会には、ほとんど選択の余地が無いのが現状です。
 まだまだ日本的雇用慣行(長期雇用保障、年功賃金、世帯給、転勤制度など)は多くの企業でそのまま残されておりますし、育児休業制度なども他の諸国に比べて充実しているとはいえません。スウェーデンでは給与の80%が支給されるといいますが、日本では25%程度です。また育児を周囲が助ける制度・環境も十分とはいえません。
 

 女性にしかできない出産とその後の母乳育児(母乳による育児の大切さは今よく知られているところです)、そしてそれを支え励まし、力付ける男性。女性・男性それぞれに役割を演じ分けなければ子供を生み育てると言う大事業 を成し遂げることは難しいことです。しかしこのような社会環境から、今の日本の夫婦は安心してこの大事業に挑戦できないのです。

 総理府広報室(当時)が平成11年2月に発表した『少子化に関する世論調査』を見ますと、「子育てを楽しいと感じるときとつらいと感じるときが同じくらい」と言う男性が31.8%女性が34.3%、「子育てがつらいと感じるときのほうが多い」と言う男性が3.8%女性が4.9%います。4割近い男女が何らかの形で子育てをつらいと感じているのです。また、そのつらさの内容では、男性が経済的な面でのつらさを挙げているのに対し、女性は子育てにかかる体力面や時間での負担、仕事との両立の難しさなどに関するつらさをあげています。この結果に、日本の現状が如実に現れているように思います。

 このような日本の現状が、未婚率の上昇および晩婚化という現象を生み、そして少子化にいたっているのです。2000年の25〜29歳の男性の未婚率は69.3%女性は54.0%です。そしてこの年の合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に生む子供の数)は1.36でした。2.08を下回れば総人口は減少すると言われている数字です。アメリカ2.13、イギリス1.68、フランス1.77と比較しても、日本の低さが際立ちます。ドイツ、イタリアなどと並び世界最低ともいえる数字です。ちなみに先ほど育児休業制度で例に挙げたスウェーデンでは、80年代半ばに合計特殊出生率が上昇基調に転じ2.0以上の水準に達しましたが、その後また下降し、最新の数字では1.50となっています。

 このように、安心して子供を生み育てられない日本の現状を早く改める必要があることは言うまでもありません。すなわち、男女共同参画社会基本法にある、「男女が、社会の対等な構成員として、(中略)均等に政治的、経済的、社会的および文化的利益を享受することができ、かつ共に責任を担うべき社会を形成する」ことが必要です。このような社会を形成するための環境整備は「二十一世紀の我が国社会を決定する最重要課題」です。東京家政大学の樋口恵子教授が書いておられる言葉によれば、「現在の日本の隅々に生き残っている男性中心のシステムを、男女両性にバランスよく作り直すこと」が急がれるということです。

 このような社会環境が整った上で、初めて「子供を生むかどうかは夫婦の問題で、周囲が口を挟むべきことではない。」と言う話になるのでしょう。そしてそのうえで、少子化社会をわれわれ日本が選択したとするならば、そこからまた新たな出発が始まることとなります。

 一方、高齢化社会は 時代の必然です。平均寿命は順調に伸びておりますし、今後急激に低下する懸念はないかと思います。特に、新潟日報の「日報抄」で以前取り上げられたように、女性の平均寿命が男性を上回っていることから、これからは「元気なオバ アチャン」の時代が来るといえるかもしれません。そのためにも、女性の社会進出がしやすい環境整備が急がれます。女性の力を生かせる体制ができなかったならば、これからの時代を日本という国が生き残っていくことが難しいのではないかとさえ思えます。女性の給与が場合によっては男性を上回るくらいでちょうど良いのかもしれません。現役引退後の女性の生活安定と言う意味でも、このような体制作りが重要です。女性は家に閉じこもり、男が外に出て働くと言う社会の末に高齢化社会を迎えたならば、日本は貧乏なオバ アチャンだけになってしまいます。

 さらに平均寿命の延びによって、現役引退後の時間が大きく増加することになります。現在でもそうですが、これからの時代はなおのこと、女性の求めに応じられるものが発展することになるでしょう。「元気なオバ アチャン」が価値を認めないものは廃れていくことになるのではないでしょうか。われわれも、せっかくのこのすばらしい浄土真宗の御教えを後世に残していくために、今から女性の皆さんのお力を宗門のために発揮していただけるような仕組みを作っていかなければなりません。